大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京家庭裁判所 昭和46年(家イ)7901号 審判

申立人 児島玉枝(仮名)

相手方 児島定夫(仮名)

主文

相手方は申立人に対し同女ならびに双方間の長男君夫および次男政次の生活費・教育費として一ヶ月金九万円を昭和四七年三月より毎月末日限り申立人方に送金して支払え。

理由

一  申立人と相手方は昭和二四年一〇月一〇日婚姻した夫婦であり、双方間に長男君夫(昭和二五年一二月二〇日生、今春早稲田大学に入学)、次男政次(昭和三〇年一〇月二六日生、都立高校一年在学)があること、

二  ところで、相手方の従来からの酒乱的傾向に問題があつたところ、相手方において昭和四六年五月入院した先の病院看護婦と情交関係を生じたことが同年九月申立人に判明したことが直接の契機となつて、双方の対立が爆発し、以来相手方は申立人と前記長男次男を残して家出し、双方別居状態となつていること、

三  相手方は○○重工技術本部調査課に勤務し、同課主任の地位にあつて月収金一六万円(手取金金一四万円位)を得ていること、

四  しかるに、相手方は感情的対立から申立人・長男・次男に対し右別居以来生活費の支給を全然しないこと(但し昭和四六年一二月のボーナス金中金二〇万円を申立人側で取得し、これにより今日まで申立人と長男・次男の生活を支えてきたが、いまはそれも費消し尽したこと)、

五  申立人は無職、長男は大学進学、次男は高校在学とそれぞれ相手方より生活費・教育費の支給を必要とする状態にあること、

六  申立人と相手方が同居中は一ヶ月金一一万円から金一二万円の生活費・教育費の支出を相手方においてなしていたこと、

七  婚姻費用分担義務にいう婚姻費用には夫婦の生活費のみならずその間の未成熟子の生活費・教育費も含むものと解すべきであるから、その性質上、夫婦協力扶助についての家事審判規則四六条九五条を婚姻費用分担に類推適用できるものと解すべく、さらに家事審判法二六条の趣旨よりして、いわゆる乙類事件についてはその調停手続中においても審判前の仮の処分をなし得るものと解するのが相当であること、

よつて、主文のとおり審判する。

(家事審判官 渡瀬勲)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例